埼玉県熊谷市における神社仏閣を軸にした地域創生に向けた官民連携の取り組み 「あついぞ!熊谷 開運ツーリズム」
令和3年度 観光庁『地域の観光資源の磨き上げを通じた域内連携促進事業』 採択案件
お寺を軸にした地域創生(地方創生)という命題
ELternalは、観光資源開発の先にあるビジョンとして、「神社仏閣を軸にした地域創生」を掲げています。神社仏閣を軸にした地域創生とは、
① 神社仏閣のファンをつくり、人を呼び込む
② 神社仏閣を訪れる方々に、地域独自の魅力を知ってもらう
③ 地域の周遊を促し、観光地としての定番化を図る
という流れで進めていく地域創生のあり方です。私たちは、この手法こそが地域創生を目指す上で最もローリスクかつサステナブルだと考えています。
理由は以下の3点です。
- 神社仏閣は観光地として人気がある。
トリップアドバイザー『訪日外国人に聞いた日本で訪れたい観光スポットランキング』の上位は半数以上が神社仏閣です。今は観光客が少なくても、磨き上げによって結果は大きく変わってきます。 - 神社仏閣はどこにでもある。
神社仏閣は全国に16万(うち寺院が約76,000か寺、神社が約80,000社)あると言われています。皆さんの街にも、歴史あるお寺や神社がきっとあるということです。 - 神社仏閣は古い方が価値がある=大規模な初期投資がかからない。
コミュニティカフェや商業施設、宿泊施設は新しい方が価値があることが多いですが、神社仏閣は古く歴史があるほどに価値があります。故に、大規模な初期投資なく磨き上げが可能です。
わかりやすくイメージしていただけるのが、北野天満宮のある”天神市”のような、全国各地で古くから続くお寺や神社を中心として栄えているの門前市や門前町というものです。参拝に訪れる方々に、その土地の産物を販売し、憩いの場や宿を提供する門前町。これを現代のサステナブルな地域創生のロールモデルのひとつであると考えています。
熊谷市の課題を観光の力で解決したい
「日本一暑い街」として有名な熊谷市。ELternalが埼玉厄除け開運大師・龍泉寺と連携し、「お寺を軸にした地方創生」のロールモデルとして地域の活性化に取り組むのがこの熊谷市です。
熊谷市では、人口減少が目下の課題です。2010年代前半に人口が20万人を下回り、2045年には15万人程度まで減少することが予想されています。人口が減少する中、街のさまざまな産業や雇用を維持するには、外部からの観光客の呼び込みが解決策のひとつとなります。
熊谷市の埼玉厄除け開運大師・龍泉寺は、2018年から「埼玉厄除け開運大師プロジェクト」に着手し、江戸時代に行われていた初詣を復活させ、2020年に初詣参拝客10万人、2022年には35万人と全国でも類を見ない急成長を遂げている寺院です。厄除けと開運のご利益を同時にいただける「日本三大厄除開運大師」の一角として、日本一にも輝いた「大開運守り」や、「切り絵御朱印」(同寺が発祥の寺)などの名物も人気で、現在では熊谷屈指の集客力を誇るスポットとなっています。
しかし、ELternalと連携先による本事業の先行調査の結果、埼玉厄除け開運大師を訪れる参拝客が、必ずしも熊谷市内を周遊(食事やレジャー、買い物等)していないということが明らかになりました。今回のプロジェクトでは、先ほどの「②神社仏閣を訪れる方々に、地域独自の魅力を知ってもらう」ということを主眼に、埼玉厄除け開運大師を訪れる参拝客が地域の魅力に触れ、周遊をしてもらえる仕組みづくりを目指しました。そのために、「”日本一暑い街”から”日本一アツい開運スポット”へ」というコンセプトを掲げ、「開運」を横軸に据えた取り組みを設計しました。
地域の特色ある観光資源を磨き上げ
独特の気候、荒川・利根川水系の水資源に恵まれた熊谷市には、農作物を始めとしたさまざまな特産物や産業が根付いています。
特に、麦の効率的生産を日本の「麦王」と呼ばれた権田愛三ゆかりの地として小麦の生産量は本州トップクラスであり、小麦を使った美味しい「つけ汁うどん」が現地では大変に愛されています。また、熊谷ゆかりの武将の名を冠した日本酒「直実」をつくる酒造さん、ハチミツ・ネギ・ひまわり畑・ヤマトイモなど、SDGsに配慮した循環型農業を多面的に展開する農家さん、新たにサツマイモ農家を立ち上げ絶品スイーツが人気のビジョナリーな若手農家さん、究極のリラックススペースを備えた温浴施設さんなど、魅力的な特産物やスポットを営まれている方が数多くいらっしゃります。
今回のプロジェクトでは、これらの事業者の方々をはじめ熊谷の多くの方に地域創生のビジョンを共有し、相互のネットワークを構築するとともに、「埼玉厄除け開運大師を訪れる参拝者」という明確な”初期ターゲット”に向け、複数の事業者さんがコラボレーションした商品やアクティビティの開発を行いました。
ELternalは、神社仏閣とのコラボレーションによる地域資源の磨き上げや、イベント時の集客最大化のための工夫(限定商品の頒布、マーケティング戦略策定等)を強みとしています。
モニターツアー開催、メディアを活用した戦略PR
プロジェクトの成果の1つとして、有識者を招いてのモニターツアーを行いました。モニターツアーの目的は、大きく2つあります。本プロジェクトにおいて磨き上げを行った熊谷市内の各スポット・アクティビティのモデルルートを周遊いただき、有識者目線でのフィードバックを受けて更なる観光資源の磨き上げに繋げることと、メディアを活用した戦略的な地域PR(Public Relations)に繋げることです。
ELternalは、PR戦略を熟知したメンバーが複数参画しており、効果的なPR戦略を立案・遂行します。実際に、熊谷案件においては、全国規模のグルメメディア(ヒトサラ)、旅行メディア(地球の歩き方)、インバウンドをターゲットにしたメディア(SAVOR JAPAN)、御朱印ファン向けメディア等に本ツアーや各スポットの様子を掲載いただき、熊谷市の周遊イメージの認知度拡大に貢献しました。
サステナブルに地域貢献する観光資源へ
観光地域としての開発において、サステナビリティ(持続可能性)は非常に重要な観点であり、ELternalもこれを抜きにして考えることは決してありません。サステナブルに地域貢献する観光資源開発を行って初めて、人口減少が続く地域の課題解決につながり、そこに暮らす方々の生活に前向きな明るいエネルギーを届けることになるのだと考えています。
そして、神社仏閣というフィールドは、数百年、場合によっては千年以上の歴史ある舞台です。だからこそ、前半に紹介した「天神市」のように、時代を超えて観光客の方々に親しまれるイベントとして末永く育っていくポテンシャルがあるのです。ELternalの地域創生(地方創生)事業は、地域の地理的・文化的背景から生まれ、土地の人々に長く親しまれてきた様々なモノ、それをつくる人々としっかりと向き合い、訪れる観光客は勿論のこと、関わる全ての人にとってポジティブな観光資源開発を追究していきます。