浄土真宗の墓じまいの費用は?お布施や離檀料などの内訳、流れについても解説
少子高齢化や核家族化を受けて、お墓の継承が年々大きな負担になってきています。浄土真宗の方にも、上記のような理由で墓じまいを考えている方は少なくないかと思います。
浄土真宗では墓じまいの費用はどれほどかかるのか、また他宗派との違いはあるのか疑問に思う方も多いでしょう。
そこでこの記事では、浄土真宗における墓じまいにかかる費用を細かく解説していきます。これから墓じまいを検討される際の参考にしていただければと思います。
浄土真宗の墓じまいの他宗派との違いとは?
浄土真宗と他宗派で、墓じまいの違いはほとんどありません。墓じまいにかかる費用相場もそれにともなう流れもほぼ同じです。しかし、浄土真宗が他宗派と若干異なる点があるので、以下で説明します。
浄土真宗では墓じまい・閉眼供養がない
まず大きな違いとして、浄土真宗では閉眼供養がありません。
閉眼供養とはお墓から魂を抜くための儀式のことで、他宗派の墓じまいの際におこなわれます。この閉眼供養によってお墓から霊魂が抜けて供養の対象からただの墓石へと変わります。そこで初めて墓石の撤去や移動が可能になるのです。
しかし浄土真宗では阿弥陀仏がすべての人を即時に極楽浄土へ導くという考えがあるため、魂はこの世に存在しないと考えられています。そのため閉眼法要や魂抜きという概念が存在しないのです。
しかし墓じまいの際に何もしないわけではなく、閉眼供養の代わりにご本尊を移動するための「遷座法要(せんざほうよう)」をおこないます。閉眼供養との違いは読経供養で読まれるお経が変わる程度であり、施主の手順や費用は大きな差異はありません。
浄土真宗には永代供養がない?
そして浄土真宗において、厳密には永代供養という考え方はありません。それは浄土真宗において故人は供養せずとも阿弥陀仏の他力本願の力によって成仏できるため、供養そのものを必要としないからです。
しかし現代の墓じまいの増加や永代供養への需要増加にともなって、永代供養墓を設置する浄土真宗の寺院も増えてきています。
その場合、浄土真宗では供養の代わりに「永代経供養(えいたいきょうくよう)」という読経がおこなわれます。永代経供養とは永代にわたって末永く読まれるお経です。他宗と違って、故人の魂が成仏されるよう読経されるわけではなく、阿弥陀仏の教えを子々孫々まで代々に伝えることを目的として読経されます。
浄土真宗のお墓の特徴
浄土真宗において墓じまいの違いは他宗派とほとんどありませんが、お墓についての違いが若干存在します。その違いについて以下で説明します。
卒塔婆や五輪塔がない
まず1つ目の違いは、浄土真宗のお墓には卒塔婆や五輪塔がありません。
卒塔婆や五輪塔は他宗派のお墓で、故人の供養のために使用されます。しかし浄土真宗では阿弥陀仏によって極楽浄土へ往生できるので、追善供養という考え方がありません。
そのため、ほかの宗派のようにお墓に卒塔婆を建てて卒塔婆供養をしたり、五輪塔を建てて先祖代々の霊魂をまとめて供養したりする必要がないのです。
お墓に彫る文字が多宗派と異なる
そして2つ目の違いは、お墓に彫刻する文字です。
ほかの宗派では墓石の正面に「〇〇家先祖代々之霊」のような彫刻がされることが多いです。しかし浄土真宗では前述のようにこの世に故人の霊魂が存在しないと考えられるため、そういった彫刻はせずに「南無阿弥陀仏」や「俱会一処(また極楽浄土で会えるという意味)」という文字を彫るとされています。
浄土真宗の墓じまいの費用総額
墓じまいにかかる費用の総額は30~300万円程度といわれています。お墓の撤去工事のみの場合は20~50万円ですみます。撤去したあとの納骨先や供養方法にはさまざまな種類があるため、それらによって費用に差が出ます。
次から墓じまいにかかる費用の内訳をくわしく見ていきます。
浄土真宗の墓じまいの費用の内訳
浄土真宗の墓じまいにかかる費用の内訳を見ていきましょう。
墓石の撤去費
まず石材店などの業者に依頼してお墓を解体・撤去する工事費用がかかります。撤去費用の相場は、1㎡あたり10~15万円といわれています。
お墓が山の斜面や狭小地など重機が入りづらい場所にある場合、撤去費用が割高になる場合があります。
またお墓の大きさや撤去の作業方法、それに必要な機材などによっても費用が変わるので事前に業者に確認しておくのがよいでしょう。
遷座法要(閉眼供養)のお布施
ご本尊を一時的に移動するためにおこなう遷座法要では、僧侶に「永代経供養」をおこなってもらいます。その際に他宗の閉眼供養と同様に僧侶に読経のお礼としてお布施をお渡しします。
お布施の相場は3~10万円といわれています。ただし、お布施は気持ちとして僧侶に渡すものなので、10万円以上でも問題ありません。
行政手続きの費用
墓じまいをして新しい納骨先に埋葬するために、改葬許可証を地方自治体に交付してもらう必要があります。改葬許可証の交付にかかる手数料は0~300円です。自治体によって無料の場合もあります。
また改葬許可証の交付のために以下の3つの行政書類を準備する必要があります。改葬に必要な行政書類の交付にかかる手数料は0~1,500円程度です。
埋蔵証明書 | 基本0円 | 現在のお墓の管理元が発行 | 今のお墓に誰が入ってるのか、墓地管理者に証明してもらう書類 |
受入証明書 | 基本0円 | 永代供養先が発行 | 新しい納骨先(受け入れ先)があることを墓地管理者に証明してもらう書類 |
改葬許可申請書 | 0円 | 現在のお墓がある自治体が発行 | 故人の情報や申請者の情報などを記載し、改葬許可証の交付を申請する書類 |
離檀料
墓じまいをして菩提寺の檀家としての関係性を終わらせる場合、寺院へ感謝の気持ちとして離檀料を包んでお渡しします。費用相場は5~20万円程です。
寺院によっては離檀料の請求がありますが、本来は檀家としての感謝の気持ちをお渡しするものなので値段はあくまで参考です。また寺院によって考え方が変わって、値段が変動する場合もあります。
浄土真宗で墓じまいしたあとの納骨先ごとの費用
近年、浄土真宗では墓じまいのあとに永代供養墓へ納骨することが多いです。ここでは永代供養墓の種類ごとでかかる費用を見ていきます。
合祀・合葬墓(石材型)
合祀・合葬墓は、共有スペースにほかの方の遺骨と一緒に埋葬される永代供養墓です。
ほかの方と一緒に埋葬されることでスペースが少なくてすむため、費用相場は5~30万円と最も安いです。
費用を大幅に抑えることが最大のメリットですが、ほかの方の遺骨と一緒に埋葬されることに抵抗がある方も少なくありません。
集合墓(石材型)
集合墓は石材型の永代供養墓のなかに設けられた共有スペースに骨壺のまま安置するタイプのお墓です。合祀・合葬墓と同様に、共有スペースでほかの方と一緒に埋葬しますが、骨壺のまま安置するのでモニュメントが比較的大きくなります。費用相場は20~50万円程度です。
個別安置墓(石材型)
個別安置墓(石材型)も石材型の永代供養墓の一種で、故人や家族で個別のスペースで遺骨が安置されます。費用相場は50~120万円です。
完全個室であり、個人や家族だけで利用できることがメリットです。屋外にあって石でできている点や、完全個室に家族だけで眠れる点など、昔ながらのお墓との共通点が多いです。しかしお墓の管理や供養は不要な永代供養のお墓です。
↓個別安置墓(石材型)について知りたい方はこちらへ↓
樹木葬
樹木葬は墓石の代わりに樹木を用いたり、埋葬場所を草花で彩ったりする永代供養墓です。自然志向の方が増えていることから、近年注目を集めています。費用相場は5~100万円です。
昔ながらの石のお墓と比べると、緑に囲まれた明るい雰囲気があります。そのため自然に包まれて眠り、最後は土に還りたいと考える方に選ばれています。
樹木葬の埋葬方法は寺院や霊園によって異なり、合祀墓か個別墓かによって料金は大きく異なります。
↓個別安置型の樹木葬について知りたい方はこちらへ↓
納骨堂
納骨堂は、専用のスペースに遺骨を安置する屋内施設です。永代供養がついている施設も多く、ロッカー式や仏壇型、自動搬送式などさまざまな種類があります。費用相場は20~150万円程度です。
設備が整っていることがメリットですが、屋内施設の運営には管理コストが大きくなるので年間管理費がかかることが多いです。
浄土真宗の墓じまいの流れ
実際に墓じまいをする際、どのような流れで進めていけばよいのでしょうか。ここでは浄土真宗の墓じまいの具体的な流れについて解説します。
家族や親族と相談する
墓じまいをスムーズに進めるためには、家族や親族の理解を得ることが最も重要です。先祖代々のお墓は自分にとってだけでなく、家族や親族にとっても大切なものです。お墓は代々継承していくものという考え方が強い方もいらっしゃいます。
墓じまいを進める前に、まずは親族や家族に相談してみましょう。墓じまいをしたい理由や背景を丁寧に説明することが大切です。
新しい納骨先を探す
家族や親族から理解を得ることができたら、次は墓じまいをしたあとに必要となる遺骨の新しい納骨先を決めていきましょう。お墓を決める際は実施に足を運んでみて、アクセスや周囲の環境などを確認しておきましょう。
そして立地や費用のほか、一般墓もしくは供養や管理の負担を軽減できる永代供養墓など、選択肢はさまざまです。
新しい納骨先について情報や資料を集めて、どんな納骨先があっているのか検討していきましょう。
今のお墓を管理するお寺に相談する
そして墓じまいをするためにはお墓の管理者の許可が必要となります。今のお墓の管理者である寺院に墓じまいを検討している旨を伝えて、理由や背景を丁寧に説明しましょう。
寺院から墓じまいの了承を得たら、そこに遺骨があることを証明する「埋蔵証明書」を発行してもらいます。
墓石の撤去工事をする業者を探す
ここまで進んだら次に、墓じまいをするお墓の解体・撤去をしてもらう業者を探して費用の見積もりを依頼しましょう。複数の業者へ相見積もりを依頼し、内容を慎重に比較して検討するとよいでしょう。
寺院や霊園によっては工事ができる石材店が決まっている場合があり、そちらに依頼することもあります。
改葬許可の行政手続きをおこなう
続いて墓じまいのための行政手続きをおこないます。
墓じまいをおこなう際は自治体へ「改葬許可証」を提出する必要があります。改葬許可証の発行には以下の3つの書類が必要です。
①埋蔵証明書:今のお墓がある寺院に発行してもらう
②受入証明書:新しい納骨先の寺院に発行してもらう
③改葬許可申請書:各市区町村役場でもらう
遷座法要(閉眼供養)をおこなう
上記がすべて完了すれば、墓じまいをするお墓からお骨を取り出すことができます。その際に浄土真宗では遷座法要をおこないます。僧侶に法要をおこなってもらい、遺骨を取り出しましょう。
新しいお墓に納骨する
最後に新しい納骨先のお墓に取り出した遺骨を納骨します。新しいお墓の管理者に改葬許可証を提示して納骨をおこないます。骨壺を破損しないように注意して移動させましょう。
また改葬先への納骨の際も、読経して供養することが多いです。納骨先の寺院や霊園の僧侶と日程を調整し、納骨日を決めましょう。
浄土真宗の墓じまいでよくある質問
浄土真宗の墓じまいに関してよくある質問とその回答について紹介します。
浄土真宗のお墓がいらない場合はどうすればいいですか?
もしも浄土真宗のお墓がいらない場合は、それ以外の新しい納骨先を見つけるとよいでしょう。例えば永代供養墓や永代供養がついた樹木葬に納骨すると、それ以降の供養やお墓の管理は寺院がやってくれるので手間や費用がまったくかからなくなるのでおすすめです。
浄土真宗の永代供養にかかる費用は?
浄土真宗の墓じまいにかかる費用は、墓じまいのみの相場だと20~50万円といわれています。新しく永代供養墓に改葬する場合だと、追加で5~120万円の費用がかかります。
費用相場は浄土真宗であっても他宗派であってもほとんど変わることはありません。
永代供養にかかるくわしい費用について知りたい方は、下記をご覧ください。
↓永代供養にかかるくわしい費用について知りたい方はこちら↓
浄土真宗の墓じまいはどのようにおこなうのですか?
浄土真宗における墓じまいでは、ご本尊様に一時的に移動してもらうための遷座法要をおこない、墓じまいをすることになります。遷座法要では、僧侶が「永代経供養」による読経をします。
詳しくは「浄土真宗の墓じまいの流れ」をご覧ください。
浄土真宗のお墓の魂抜きはできますか?
浄土真宗では亡くなった人は極楽浄土に往くと考えられているため、魂はこの世にとどまることはないと考えます。お墓に魂が存在するという考え方がないため、お墓の魂抜きはできないとされています。
そこで墓じまいの際は、お墓の魂を抜く閉眼供養の代わりにご本尊様を一時的に移動するための遷座法要をおこないます。
まとめ
ここまで浄土真宗における墓じまいにかかる費用について解説してきました。
浄土真宗でかかる墓じまいの費用相場も、他宗と大きな違いがあるわけではありません。
近年の少子高齢化や核家族化を受けてお墓の継承が困難になっている近年、墓じまいはお墓の維持にかかる負担を軽減してくれる選択肢の1つです。
今回解説した内容が墓じまいという手段を検討する材料の1つになれば幸いです。
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この記事の監修者
小原 崇裕
2002年に「NPO法人永代供養推進協会」を設立し代表理事に就任。まだ永代供養が知られていない20年以上前から日本の永代供養墓の普及・推進に努める。年間約1500件の無料仏事相談を受け、エンディングをめぐるお葬式やお墓などへのアドバイスと支援活動に従事。著書に『安心できる永代供養墓の選び方』。シニアライフマネジャー1級。
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