墓じまいから散骨まで9つの手順!費用や注意点と散骨以外の対処法も紹介
墓じまいをしてお墓へ納骨されている遺骨を散骨したい方や、お墓を持つのをやめて、もしもの際は散骨をしたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、墓じまいから散骨までスムーズに進めるための手順と、必要な費用や気をつけるべき注意点について、分かりやすく解説します。
墓じまいやお墓を所有しない方が知っておきたい散骨以外の遺骨の対処法についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧になりお役立てください。
墓じまいしたあとに散骨はできる
墓じまいをしたあとは、遺骨を散骨できます。そもそも墓じまいや散骨とはどのようなことなのか、知っておきたい基礎知識について解説します。
墓じまいとは?
墓じまいとは、不要な墓石を解体撤去のうえ更地に戻して、墓地の使用権を霊園やお寺へ返還することをいいます。
2022年の調査結果では、墓じまいにより遺骨を移動する改葬が15万件を超えて過去最高値に達し、墓じまいブームが起こっています。
大きな要因は、各家族化や少子高齢化にあり、かつては長男が墓守することが当たり前でしたが、現在はそのような習慣もありません。
葬儀やお墓に対する価値観にも変化が生じ、シンプルな供養の在り方が好まれています。
散骨とは?
散骨とは自然葬とも呼ばれ、遺骨を粉末状にして海や山林などへ撒き、自然環境へ還す儀式です。
火葬直後だけではなく、お墓から取り出した遺骨も散骨は可能で、散骨は墓じまいの対処法としても選ばれています。
散骨の種類
散骨には種類があるため、一般的な3つの散骨方法の特徴について解説します。
海洋散骨
海洋散骨とは海の沖合いで散骨をするのが特徴で、国内なら北海道から沖縄まで好きな地域を選択できるほか、ハワイでの散骨を提供している業者もいます。
ただし、海洋散骨を禁止・制限している自治体もあるので、散骨を希望する地域があれば散骨ができるか確認しておきましょう。
人数や内容に応じた料金プランがあるほか、船上でお別れ会や会食をすることも可能です。
山林散骨
山林散骨とは人里離れた山林で散骨をすることをいい、土へ埋葬するのではなく、樹木の根本などへ遺骨を撒いて自然に還すことをいいます。
法人などが所有している山林を開放して、散骨サービスとして提供しているのが特徴です。
宇宙散骨
宇宙散骨とは、気球で散骨をするバルーン葬や、ロケットで遺骨や遺灰を入れたカプセルや専用容器を大気圏外へと放つ散骨方法です。
空の散骨には、ドローンやセスナ機・ヘリコプターなどによって、海上から遺骨を撒く空中散骨などもあります。
墓じまい後の散骨が向いている方
墓じまい後の散骨が向いている方は、次の5つのケースに該当している場合です。
お墓を所有せずに費用を抑えたい方
2024年現在、お墓の費用は約150万円が相場で、墓石代が約100万円、土地の永代使用料が約50万円です。さらにお墓を維持していくためには管理費や修繕費なども必要ですが、お墓がなければこれらの費用はかかりません。
故人の故郷やゆかりの地へ遺骨を還したい方
故人の故郷やゆかりの地へ遺骨を還したい場合、散骨は最良な手段です。
故郷やゆかりの地に散骨をおこなう際は、散骨をする土地の所有者に許可をとる必要があります。
海や山が好きな故人に適した場所で供養したい方
故人の故郷やゆかりの地へ遺骨を還したい場合、散骨は最良な手段です。
故郷やゆかりの地に散骨をおこなう際は、散骨をする土地の所有者に許可をとる必要があります。
海や山が好きな故人に適した場所で供養したい方
お墓の継承者がおらず、放置されてしまったお墓は無縁仏となり荒れ果ててしまうため、墓じまいによって処分することが最良です。
お墓の継承者がいない方は、お墓の継承者がいなくてもお寺にお骨とお墓を管理してもらえる永代供養墓に納骨するのもおすすめです。
海や山が好きな故人に適した場所で供養したい方
墓じまい後は一部の遺骨を身近で手元供養して、残りの遺骨を散骨する方法もあります。手元供養は、故人の存在を身近に感じられ、宗教や形式にとらわれない供養方法です。
この場合も、残りの遺骨を永代供養墓に納めるなど、別の選択肢を選ぶこともできます。
散骨のメリット
墓じまいによる散骨は、大きなメリットが3つあります。
お墓の費用を削減できる
お墓は年間1万円前後の管理費が必要で、お布施やお墓参りの交通費が負担になっている方もいらっしゃると思いますが、墓じまいで散骨すれば、これらの費用がいりません。
お墓の維持管理の手間が省ける
墓じまいによって散骨をすれば、お墓の草むしりや墓石のお手入れといった維持管理の手間を省くことができ、心身の負担も軽減できます。
子どもや孫の負担を軽減できる
近年、家族に迷惑をかけないように生前に終活をする方が増えていますが、墓じまいや散骨は子どもや孫に負担をかけない対策の1つとして選ばれています。
散骨のデメリット
墓じまいで散骨する際は、5つのデメリットがあるため、気をつけてください。
お墓がなく手をあわせる場所がなくなる
心のよりどころとなるお墓がないと、命日やお盆やお彼岸に寂しさや虚しさを感じることがあり、人生の節目に伝えたいことやお願いしたいことがあってもお参りができません。
子どもや孫にとって供養の習慣がなくなる
子どもや孫にとって、お墓参りやお仏壇へ手をあわせる供養の習慣は命の大切さを学び、他人への思いやりの精神を育む効果があると言われています。
子どもや孫に供養の習慣がなくなることを不安に思う方もいるはずです。
遺骨を粉骨しなければならない
散骨では、遺骨を2mm以下の粉末状に粉骨しなければならないルールがあるため、遺骨をパウダー状にすることに抵抗がある方はご注意ください。
人目に触れたり周囲に迷惑をかけたりしてはならない
散骨は条例違反や訴訟問題にならないよう、人目に触れる場所を避け、周囲に迷惑をかけないよう、秩序とモラルを守らなければなりません。
散骨後の遺骨は取り戻せない
散骨した遺骨は再び手元へ取り戻すことができません。墓じまいでお墓を持たない方法は散骨以外にもあるため、少しでもためらう気持ちがあれば散骨は避けましょう。
家族や親族から反対されやすい
墓じまいや散骨は家族や親族から反対されやすいため、親戚トラブルにならないよう、必ず事前に話し合って承諾を得る必要があります。
理想のイメージと異なるケースがある
散骨はホームページやドラマなどの印象で、美しい環境をイメージしやすい一方で、荒れて濁った海や薄暗い山林が散骨場所となるケースも多々あるためご注意ください。
散骨をする前に必ず現地の確認をおこないましょう。
墓じまいから散骨までスムーズにおこなう9の手順
墓じまいから散骨までの流れにおいて、失敗や二度手間を防いで、スムーズに進める9つの手順をご紹介します。
①墓じまいと散骨について家族や親族と話し合う
墓じまいと散骨について、それぞれ反対意見がないかどうか、家族や親族としっかりと話し合います。
同意を得たら、どのような散骨方法がよいか、費用負担や役割分担についても誰が何をするのかなどについて話し合いましょう。
②墓じまいについてお墓の管理者へ相談する
墓じまいをする墓地の管理者へは、事前に墓じまいの意向を申し出て、墓じまいに必要な工事の範囲を確認しておくと無駄な費用を削減できます。
寺院墓地では、あらかじめお墓の維持管理の悩みを相談しておくことで、墓じまいの承認を得られやすくなり、トラブルを回避しやすいです。
③墓じまいと散骨の業者を決定する
墓じまいと散骨の業者は一括して委ねる方法と、工事と散骨とをそれぞれ分けて手配するケースとがあります。
複数社へ相談や見積もりを依頼し、比較検討のうえ業者を決めて契約します。契約後は、日程などの詳細について打ち合わせてください。
寺院や霊園によっては墓地で工事できる業者が指定されている場合もあります。この場合はその業者に頼むことになりますので、注意しましょう。
④墓じまいの行政手続きをする
墓じまいをする際は改葬許可証が必要となり、散骨による手続き方法は自治体によって判断が異なるため、事前に墓じまいする墓地を管轄している役所へ確認してください。
一般的には、役所から改葬許可申請書を受け取って必要事項を記入のうえ、墓地から受理した埋葬証明書と散骨の契約書を提示して、改葬許可証を発行してもらいます。
⑤閉眼供養をおこなう
一般的に墓じまいをする際は事前に僧侶による閉眼供養をおこなって、読経により墓石に宿った魂を抜く儀式をします。
閉眼供養では、3~5万円程度のお布施を包み、寺院墓地の場合はこれまでお世話になったお礼として、離檀料として5~20万円程度のお布施を渡します。
⑥遺骨を取り出して散骨業者へ預ける
墓じまいの事前準備ができたら、工事業者へ遺骨を取り出してもらい、散骨業者へ預けます。
散骨業者によっては専用の梱包資材を提供していますが、遺骨はゆうパックなら郵送ができるため、丈夫な段ボールと緩衝材を利用して自分で発送しても構いません。
⑦墓石の解体撤去工事をおこない墓地を返還する
墓石から遺骨を取り出したら、お墓は解体撤去工事によって更地にして、工事後は土地の使用権を墓地へ返還する手続きをします。
遠方の工事業者を利用する場合は工事前後の写真撮影を依頼しておくとともに、公営墓地の補助金を申請する方は忘れずに手続きをしてください。
⑧散骨業者で遺骨を洗骨・粉骨する
散骨業者では、遺骨をパウダー状に粉末するだけではなく、泥や雨水の汚れやカビの生えてしまった遺骨を洗浄してくれるサービスを提供しています。
洗骨や粉骨は、遺骨の量(骨壷の大きさ)によって異なり、それぞれ1~3万円程度が相場費用となっています。
⑨散骨をおこなう
散骨はあらかじめ決めた日程で実施しますが、天候によっては変更が生じる可能性もあります。散骨業者の案内に従って、参列する親族へも連絡して準備をしておきましょう。
人目を避ける意味で、散骨では基本的に喪服を着用しません。安全を第一に、海辺や山林でも滑りにくい安全な靴や動きやすい服装が最良です。
墓じまいと散骨に必要な費用
墓じまいと散骨に必要なそれぞれの費用について解説しますので、予算の把握にお役立てください。
墓じまいの費用
内訳 | 金額 |
墓石の解体撤去費用 | 約20~50万円 |
閉眼供養 | 約3~5万円 |
離檀料 | 約5~20万円 |
行政手続き費用 | 約0~1,500円 |
合計 | 約30〜50万円 |
墓じまいの費用は、総額で30〜50万円です。墓石の解体撤去工事費用は、1㎡あたり約10万円〜15万円で、土地の区画面積が大きいほど費用負担が大きくなる傾向にあります。
散骨の費用
種類 | 費用相場 |
海洋散骨 | 約5~40万円 |
山林散骨 | 約5~30万円 |
宇宙散骨 | 約5~30万円 |
散骨は種類によって金額に差があり、散骨業者ではさまざまな料金プランやオプションサービスを用意しています。
海洋散骨は散骨業者へ任せる代行散骨が最安となり、ほかの家族と船に乗り合わせる合同散骨なら約10~20万円、船を貸し切る個人散骨は約15~40万円が相場です。
山林散骨も基本的に散骨業者による代行散骨が最安で、家族や親族と散骨する場合、地域やエリアによって費用が異なります。
宇宙散骨はバルーンで成層圏で散骨するタイプが最安で、ロケットを使用する場合、地球の周回軌道上にカプセルを乗せる場合は割安ですが、月面や宇宙空間への散骨は高額です。
墓じまいや散骨で気をつけるべき5つの注意点
墓じまいや散骨では気をつけるべき5つの注意点があるため、くわしくご紹介します。
遺骨には法律がある
散骨にあたって、人目を避けなければならない理由や粉骨が必要な要因は、法律で正式に認められていない風習だからです。
そもそも遺骨には法律があり、墓地以外の場所へ埋葬・納骨することが禁じられています。
さらに、遺骨を遺棄する行為は犯罪にあたり、刑法によって3年以下の懲役が科せられます。
墓じまいでは工事できる業者が限られている場合がある
霊園や寺院墓地などの民営墓地では、工事ができる指定業者が存在する場合があります。
墓じまいするお墓のある地元の石材店でも出入りができないケースがあるため、墓じまいでは必ず事前に指定業者の有無を確認してください。
散骨では洗骨や粉骨が必要になる
散骨にあたっては、衛生面の配慮による洗骨や法律の遵守のための粉骨が必要になるためご注意ください。
さらに、洗骨や粉骨の費用は、基本プランの料金に含まれていないケースが多いことも知っておきましょう。
散骨は改葬許可証が入手しにくい場合がある
散骨では、改葬許可証が入手しにくい場合があるため、役所や墓地への説明や説得にご注意ください。
墓じまいでは、改葬許可証がなければ墓石の解体撤去工事が不可能ですが、そもそも改葬許可証とは、改葬先のお墓へ提出して納骨するための必要書類となります。
散骨は近年注目され始めたため、役所や墓地の担当者が散骨のための墓じまいについて十分に理解していない可能性があります。
散骨は一部の遺骨だけおこなうことができる
散骨はすべての遺骨ではなく、一部の遺骨だけを撒くことも可能です。
散骨をするとそのお骨が手元に戻ってくることはありません。
分骨によって、散骨とほかの供養方法を併用することや、家族や親族と分骨しあうこともできるため、悔いのない判断をしてください。
墓じまいで散骨以外の遺骨の対処法
墓じまいでは、散骨以外にも遺骨の対処法があるため、多くの方に選ばれている永代供養と手元供養についてご紹介します。
永代供養
種類 | 費用 |
合祀・合葬墓(石材型) | 約5~30万円 |
集合墓(石材型) | 約20~50万円 |
個別安置墓(石材型) | 約50~120万円 |
樹木葬 | 約5~100万円 |
納骨堂 | 約20~150万円 |
永代供養付き一般墓(個人墓) | 約100~150万円 |
永代供養とは、お墓を持たずに霊園やお寺へ遺骨の管理や供養をしてもらえる仕組みのことをいい、上記のような種類があります。
最新の調査結果では、お墓選びで約65%の方が跡継ぎのいらない永代供養を選択しており、手軽さやお墓参りができることが大きな魅力です。
出典:お墓の消費者全国実態調査(2024年)霊園・墓地・墓石選びの最新動向(いいお墓)
以下ではそれぞれの永代供養墓ごとの特徴をご説明します。
合祀・合葬墓(石材型)
合祀(ごうし)や合葬墓とは、ほかの方の遺骨と一緒に土へ還すお墓で、散骨と同等の価格で埋葬できる永代供養のことをいいます。
リーズナブルなことがメリットですが、散骨と同じように、合祀された遺骨は取り戻すことができないため注意が必要です。
集合墓(石材型)
集合墓とは、不特定多数の骨壷や骨箱を1ヶ所にまとめて収容する墓石でできたお墓のことをいいます。
1体なら安価ですが、遺骨の数量によっては高額になるほか、お墓参りで混雑してゆっくり手をあわせられないデメリットにご注意ください。
個別安置墓(石材型)
個別安置墓とは、家族などの申し込み単位で専用スペースが仕切られたマンション型などのお墓のことをいい、個別のスペースがあるため遺骨がどこに収められているかわかりやすく、遺骨のある場所に対面してお参りができることが大きなメリットです。
基本的に複数名を納骨できるため、墓じまいに最適で、将来の自分たち家族のお墓としても活用できるコストパフォーマンスが優れた個別安置墓もあります。
↓個別安置墓(石材型)について知りたい方はこちらへ↓
樹木葬
樹木葬とは、樹木や花々に囲まれた敷地に眠るお墓のことをいい、合祀と個別納骨ができるタイプとがあり、散骨を検討している方に人気の永代供養墓です。
自然環境では季節によって美しさを感じられないこともある一方で、四季折々の花々が楽しめる樹木葬はお墓参りをする方々からも定評があり、癒される環境が人気を集めています。
↓個別安置型の樹木葬について知りたい方はこちらへ↓
納骨堂
納骨堂とは、室内にある遺骨の安置施設のことをいい、ロッカー型・仏壇型・位牌型・自動搬送式など、さまざまな形状があります。
天候に左右されずお参りできる点が納骨堂の大きな魅力ですが、年間管理費が必要なことや、一定期間を過ぎると合祀されるケースが多い点がデメリットです。
手元供養
種類 | 費用 |
ミニ骨壷 | 約5千~8万円 |
ミニ仏壇 | 約5千~15万円 |
アクセサリー | 約3千~17万円 |
ジュエリー製作 | 約30~300万円 |
手元供養は、遺骨を自宅へ据え置きする方法と持ち歩く方法とがあり、インテリアやファッションなど、好みに合わせて供養でき、遺骨は宝石にすることも可能です。
墓じまいや遺骨の相談に最適な業者
墓じまいは手順さえ分かれば難しくないため、代行業者に依頼せずに直接、経験豊富な石材店や工務店などの工事業者へ委ねた方が安心で、仲介費用を抑えられます。
遺骨の対処法についても、散骨業者や永代供養をおこなっている墓地や寺院へ幅広く相談して、よりよい方法と信頼できる場所を選択しましょう。
まとめ
お墓が不要な方は「遺骨は海に撒けばよい」と思いがちで、いざとなるとイメージや費用が想像とかけ離れている事実に気づく方が多い傾向にあります。
また、一度散骨してしまうとお骨を手元に取り戻すことができなくなってしまいます。
そのため墓じまいや散骨を検討するときは、先々の影響や自分や家族に万一のことがあった場合の対策を踏まえて、よりよい方法を選択してください。
全国永代供養墓・樹木葬グループでは、管理費が不要な合祀しない永代供養墓や、四季折々の花々が美しい樹木葬をご紹介しています。
墓じまいによる改葬のご相談も承っており、事前にご予約いただければ、現地見学や対面による無料相談も可能ですので、どうぞお気軽にお問い合せください。
この記事の監修者
小原 崇裕
2002年に「NPO法人永代供養推進協会」を設立し代表理事に就任。まだ永代供養が知られていない20年以上前から日本の永代供養墓の普及・推進に努める。年間約1500件の無料仏事相談を受け、エンディングをめぐるお葬式やお墓などへのアドバイスと支援活動に従事。著書に『安心できる永代供養墓の選び方』。シニアライフマネジャー1級。
-
お電話でのお問い合わせ0120-78-7676受付時間 9:00 ~ 17:00
-
メールフォームなら24 時間受付可能です